皆さんはゲームとかでよく遊びますか?
日本はゲーム産業が世界的に有名だと思います。
PlayStationやNintendo SWITCH なども日本の会社が作っていますし、世界で一番ゲームが身近な国なのではないでしょうか。
今回はそんなゲームに使われる音楽、いわゆる「ゲーム音楽」について、
著作権に関してや、業界内でどのように使われているのか。
またどのような仕組みで著作権が管理されているのかについて調べてみましたので、紹介させていただきたいと思います。
音楽著作権というもの自体が比較的新しいものなわけですが、ゲーム産業自体もまだ30年ほどしか経っていないとても若い産業なんですよね。
ただでさえ著作権などの規定が生まれて間もない音楽業界に、さらに若いゲーム業界が関わってくるので音楽著作権についてはいろいろと紆余曲折があったようです。
今回の記事ではその全てを事細かく解説することは難しいのですが、全体的にどのような仕組みになっているのかについてわかるような内容にしました。
普段よく聞いているゲームに使われてる音楽と著作権がどのように絡んでいるのかさっそく見ていきましょう。
目次
ゲーム音楽の著作権はどんな仕組み
ゲームやたくさんの音楽が使われていますよね。
オープニングテーマやエンディングテーマなどのタイアップ曲や、プレイ中に流れるBGMなど、ゲームに関連して使われる音楽は多種多様です。
また音ゲーなどの音楽を使ったゲームというものもありますし、単なる脇役ではないほどゲームの中の音楽というのは重要な存在なのではないでしょうか。
しかし実際にプレイしていてよく聞く機会は多くあると思いますがその歴史や仕組みについてはほとんどの人があまり知らないのではないでしょうか。
そんなゲーム音楽について深掘りしてみたいと思います。
ゲーム音楽の歴史とは?
ゲーム音楽の歴史について簡単に解説していきます。
1983年のファミコンや1994年のセガサターン、PlayStationまたはニンテンドー64といった家庭用の据え置きゲーム機が発売された当初、
JASRAC にはゲームソフトで使う音楽を管理するための使用料の規定がありませんでした。
規定がない状態でゲームの音楽を管理するにあたって、当時のJASRAC はビデオグラムの使用料規程というのを使いまわして対応していました。
ですがこのビデオグラムの使用料規定というのは、ゲーム会社にとってはとても高すぎたらしいんです。
複製使用料、つまり音楽作品のコピーを1分使うだけで7円もの使用料を取っていました。
(流石に高すぎますよね。ボッタクリバーもびっくりですね)
ゲームをプレイ中に延々と流れるBGMなどはとても長い時間になってしまいますし、たった1分曲を使うだけで7円というのはゲーム会社にとっては大きな負担でした。
ゲームなんて何時間もいろんな形で音楽流れますもんね。
ゲーム会社は JASRACに 使用料を払いたくなかった
ビデオグラムの使用料規定が高すぎるので、ゲーム会社はJASRACに使用料を払いたくなかったわけです。
よってゲーム会社が始めたのは自社でクリエイターを雇用し社内でゲーム音楽を創作させることでした。
(現在もこの手法は行われていますね)
または外部のJASRAC に入会していない(ノンメンバーの)作曲家などを雇って、
ゲーム音楽の制作を委託してその代金を払い、著作権は買い取りというスタイルにしていたようです。
つまり制作費と著作権をまとめて買い取るような形。
買取式で曲だけ作ってもらって制作費だけを払えば、ゲーム会社が何百時間その曲を使おうとも使用料を払う必要ないからです。
ゲーム産業がどんどん隆盛を極めるに従ってゲーム音楽の需要も増えてきました。
ですがその一方で、JASRACに登録されていれば得られたであろう使用料は皮肉にもJASRACの使用料の高さゆえにほとんど得られなかったわけです。
(個人的には自業自得と思わなくもないですね。欲をかいて損をした形です。)
ゲームの中で長い時間使う音楽を、JASRACに登録されている楽曲を高いお金を払ってまで使うというメリットはゲーム会社には無かったのでしょう。
もう少し使用料を安く抑えたり、作品単体での使用料規定などを決めていればJASRACにも音楽作品を作った作曲家にも使用料は入ったのに残念な話ですよね。
まあゲーム会社は安く抑えられて得ですけど。
そういった事情もあり、ゲーム音楽の作曲家は印税という形で作品の使用料を手にすることは少なかったのです。
JASRACに登録されない楽曲も多く、ゲームの音楽は基本的にはゲームの供する目的以外での使用は出来ないことが多いです。
対してアニメやドラマの楽曲作品の著作権は買い取られることは無く、作者が著作権を保持していることが多いので、印税収入を得ることができます。
ヒットしたアニメの主題歌の印税ってすごいらしいですよね。
JASRAC の会員もこっそりゲーム音楽を制作するようになった
ゲーム会社は長い間JASRACの会員ではない作曲家に、ゲーム音楽の作曲を依頼していました。
ですがそのうちにJASRACの会員である作曲家などもゲーム音楽を依頼を受けて密かに創作するようになりました。
JASRAC にバレないように別のペンネームを使ったりなどをしてこっそりと仕事を受けていたようです。
次第にゲーム会社とJASRAC会員の作曲家との間で、直接著作権使用料等に関する契約が交わされていれば、
JASRACはそれについては関与しないという 業界内の慣行ができてしまったらしいです。
こういった様々な出来事の影響もあって、JASRAC とゲーム会社間でのゲーム音楽に関する著作権使用料の取り決めはうまくいかなかったようです。
要するにめっちゃ揉めたんですね。
紆余曲折の末、JASRACはゲームソフトを使用料規程を決めた
上記のような業界での決まりごとやゲーム会社と作家間での契約締結、
JASRAC とゲーム会社間での協議の難航などによって紆余曲折がありましたが、
結局1996年の8月30日に、JASRACと一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会という団体との間で合意が成立しました。
ここで新しい使用料規定が決められました。
その規定とは、 ゲームソフトなどで使われる著作物である楽曲一曲につき、使用料は基本使用料と複製使用料を合わせて算出することにして、
ゲームソフト自体の個数に関わらず1分までごとに800円、複製使用料は一個につき1分まで毎に3円という内容でした。
この取り決めは今ではなくなり新しいルールが適用されています。
現在ではゲームソフトに関する権利はどうなっている?
現在では新しいゲームソフトに関する権利が規定されていて、
JASRACの著作権信託契約約款に書いてあります。
販売形態によってそれぞれの権利の形が違うので一つずつ見ていきましょう。
パッケージで販売する場合
まずはゲームをパッケージで販売するというパターンです。
これはつまり据え置きゲームなどのゲームソフトを一つ一つのパッケージで販売するという形のことです。
内容としてはゲームに供する目的で行う複製について、権利者が使用料を定めることとしています。
つまりゲームなどで使われるために作られた楽曲について、その楽曲の著作権者が使用料を決めて良いということですね。
基本的にゲームソフトの著作権使用料になどについては権利者が基本使用料と複製使用料の二つを設定しているようです。
基本使用料というのは著作物つまりゲーム内で使われる楽曲の固定に関わる使用料のことです。
複製使用料とはその著作物のコピーに関わる使用料のことです。
通常の場合は基本使用料とやロイヤリティ、つまりいくら使われたらそれによっていくら入るという形ではなく、
〇〇円というように一定の金額が設定されることが多いようです。
逆に複製使用料、つまりコピーを使った際に発生する使用料はロイヤリティとなりまして一つごとに印税が設定されています。
このロイヤリティについてはどのように決めても良いらしく、例えば小売価格の5%などといったように割合で決めても良いらしいですし。
何分につきいくらというように分単位で決めても良いらしいですね。
これに関しては当事者間で決められた使用料を、JASRACがゲーム会社から徴収し、
そこから手数料を引いたものを著作権者に分配すると言った仕組みになっているようです。
アーケードゲームの場合
次はゲームセンターなどで設置されているアーケードゲームのパターンです。
アーケードゲームのような大掛かりな業務用ゲーム機については、個人用のパッケージゲームソフトなどよりは使用料を高く設定するのが一般的です。
基本使用料は30万円から50万円程度が相場のようですね。
また複製使用料は1曲100円から200円程度が平均的らしいです。
アーケードゲームとは少し違うかもしれませんが、パチンコ、パチスロなどで使われるBGMなども同じような使用量の設定がされています。
こういった遊戯技と呼ばれるものはとてもギャンブル性が高く収益率もいいので、個人用のゲームソフトなどよりは ロイヤリティが高く設定されているのが特徴です。
オンラインゲームの場合
それではオンラインゲームなどの場合はどういった形になるのでしょうか。
オンラインゲームでもパッケージでの販売に関する著作権信託契約約款と同じく、
「ゲームに供する目的で行う複製」の場合は著作権者が使用料を定めることになっています。
つまりオンラインゲームなどの楽曲の基本使用料は、パッケージで発売されているゲームソフトと同様に、
著作者とゲーム会社との協議によって決められるということです。
基本使用料についてはそれぞれのゲーム会社と権利者との間での取り決めになるのでいくらにしても自由です。
しかし配信使用料についてはJASRACが明確な決まりを設けています。
ダウンロード形式などの場合は配信価格の6.2%または6.2円のいずれか多い金額。
ストリーム形式での場合は月間の情報量および広告料等収入の2.8%。
このように取り決めが決まっています。
↓詳しくはJASRACのページをどうぞ
・音ゲーの場合
それではいろんな楽曲がゲームの中で登場する音ゲーの場合はどうなっているのでしょうか。
実はJASRACは音ゲーでの楽曲の使用について特別な措置をしています。
音ゲーを軽く紹介しておくと、太鼓の達人のようないろんな楽曲作品がゲーム中に登場するようなゲームのことですね。
こういった特定のジャンルのゲーム配信では、国内の作品を利用する場合はパッケージで販売されているゲームやオンラインゲームとは異なり、
配信などの使用料規程を使ってゲーム会社に許可を出しているようです。
音ゲーなどの細かい規定を見たい方は JASRAC のページに記載しているので確認してみてください。
https://www.jasrac.or.jp/info/network/pdf/biz_mo/tokuteigame.pdf
委嘱作品とは?
ゲーム音楽などに関してよく出てくるのが委嘱作品という言葉です。
委嘱作品や委嘱楽曲などと呼ぶのが普通ですが、言葉だけみると難しそうですよね。
委嘱作品というのは簡単に言えば特定の目的のために制作した楽曲といったところです。
例えばゲームのオープニングやエンディングで有名アーティストとタイアップした楽曲などありますよね。
ゲーム自体の販売台数を上げるために注目度の高いアーティストとゲームをコラボして作った楽曲などのことをいいます。
たとえばFF12のテーマソングをアンジェラ・アキが歌っていますが、これも委嘱作品といえると思います。
細かい当事者間の取り決めにもよりますけど。
ゲーム用委嘱作品は使用料を免除できる
実はゲーム音楽の委嘱作品は昔は音楽出版社が管理することが多かったようです。
これはゲーム音楽の委嘱作品をJASRACに管理委託すると使用料免除を受けることができなかったかららしいのですが、
音楽出版社が自己で委嘱作品の管理をすることが多かった状況を鑑みて、JASRACは「著作権信託契約約款」に一定の範囲であれば使用料を免除できるという内容を付け加えたようです。
これには決まりがありまして委託者(つまり委嘱作品の製作者)はあらかじめ JASRAC に届け出る書類に記載を行わなければならないのです。
具体的に言うと委託者名、委嘱作品のゲームソフト名、ゲームの発売日、免除するかどうかについてを書かなければいけないようですね。
これを提出することで JASRAC はゲームソフトに使われる委嘱作品のすべての利用に対して、使用料を免除してくれるようになります。
まとめ
今回はゲーム音楽の著作権に関しての仕組みをざっくりと解説してみました。
ゲーム音楽著作権のまとめ
- ゲーム会社とJASRACは過去に著作権に関して大分揉めた
- ゲーム音楽の著作権はゲーム会社に買い取られることが多い
- 基本使用料と複製使用料にわかれている
- ゲーム音楽の著作権使用料は販売形式によって違う
- ゲームのタイアップ曲などのことを委嘱作品と呼ぶ
JASRACの細かい契約約款などがたくさん出てきて非常にわかりにくいのですが、もう少し深掘りして知りたい方はこの記事で説明した内容に加えて JASRAC のホームページを見てみてください。
特に配信に関する使用量の割合や音ゲーに関する使用料の割合は実際にどうなっているのかを確認してみることをお勧めします。
実際にゲームで使われる音楽の著作権がどのように管理されているかについてはゲーマーの人でもあまり知らないのではないでしょうか。
とはいえこういった知識を知っておくと普段ゲームをする人はゲームに使われてる音楽がどのように管理されているのか考えるきっかけになると思うので是非 JASRAC のサイトやゲーム音楽の著作権に関する本などをチェックしてみてください。