皆さんは映画を見ることありますか?
映画にもたくさんの音楽が使われていますね。
映画の最後のエンドロールにたくさんの会社や人の名前がクレジットされていることから分かる通り、映画製作には多くの著作者が関わっています。
今回は映画で使われる音楽に関する著作権がどの様に扱われているのかについて調べてみたので解説したいと思います。
映画音楽の著作権も中々小難しい構造になっているので、理解するのがめんどくさい部分なはあるかと思いますが、できるだけわかりやすいように説明していきます。
映画音楽の著作権とは?
映画制作にはたくさんの人が関わっていますよね。
例えば映画の企画などをするプロデューサーと映画監督などのトップの人を始めとして、俳優や女優などの出演者に、
脚本家や挿入歌などを作る音楽家、カメラマン、スタイリスト、デザイナーなどたくさんのスタッフが映画製作に関わっています。
たくさんの人が映画を作っているわけですが実はその全ての人が映画に関する著作権を持っているわけでありません。
また映画の中で使われる音楽に関しても、使われ方などによって誰に著作権があるかや著作権使用料なども変わってきます。
映画の著作権者って?
それでは映画の著作権というのは誰が持っているのでしょうか。
著作権法の第16条に映画の著作物の著作者についての記述があります。
第16条
第16条 映画の著作物の著作者は、その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者を除き、制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする。
著作権法第16条を見てわかるとおり映画の著作者とは映画の脚本家や原作者また音楽作家ではなくて、
制作や監督、演出、撮影などを行い、その映画の全体的な形成に寄与したものということがわかります。
映画の原作者や音楽作家、脚本家の事をクラシックオーサー(古典的著作者)と言います。
また監督、製作、撮影、演出、美術などを担当している人の事をモダンオーサー(現代的著作者)といいます。
このモダンオーサーとは具体的にはプロデューサーや監督ディレクターや撮影監督美術監督などのことを言います。
「映画の全体的形成に創作的に寄与したものとする」第16条の記述にある通り、映画制作に補助的に関わった助手やアシスタントなどは含まないということになっています。
分かりやすく言うと映画の製作において重要なファクターを担った人物、 映画の制作に全体的に関わっているような仕事をしている人のことですね。
映画に関わった全ての人が著作者になるわけではないというのはこういった著作権法上の決まりごとによります。
ややこしい決まりごとが色々あるので、著作権についても把握しにくいので面倒な点ですね。
映画の著作権は誰に帰属するのか
著作権法第16条についてや、クラシックオーサーやモダンオーサーについては理解してもらえたと思うのですが実際には誰が映画の著作権者になるのでしょうか。
そもそも著作権とは著作物(今回の場合は映画)を創作したものに与えられる権利であるわけですが、
著作権法の第29条によって、実際は少し違うものになっています。
著作権法第29条に
映画の著作物(第15条第1項、次項又は第3項の規定の適用を受けるものを除く。)の著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する。
引用 https://ja.wikibooks.org/wiki/%E8%91%97%E4%BD%9C%E6%A8%A9%E6%B3%95%E7%AC%AC29%E6%9D%A1
という記述がありまして、
著作権法上ではモダンオーサー(映画監督撮影監督など)が映画製作への参加を約束しているときは映画の著作権自体は映画製作者に帰属することになっています。
これだけ見ると何を言ってるかよくわからないかもしれませんが、
かいつまんで言うと、監督などのモダンオーサー(現代的著作者)が映画制作に参加すると事前に約束していたとします。
その場合はその映画を制作した映画監督や撮影監督などに著作権が行くわけではなく、映画の制作会社などが著作権を持つことになる(帰属する)というわけです。
著作権法における帰属(英: attribution)とは、ある著作物を利用する場合、その著作物の著作者への謝辞やクレジットの掲載を要求することを指す用語である。 または別の著作物に表示すること自体を指す。
このためモダンオーサーは映画の著作権を保有していないので、実際に作ったとしてもその映画に関する著作権を行使することはできないのです。
(自分が制作したということはできますが、自分の著作物であると主張して、それによる利益を得ることができない。)
モダンオーサーは映画の2次的な利用やその利用に関して報酬が欲しい場合などは映画製作者と別に契約をする必要があるようです。
書き下ろされた映画音楽の著作権
映画というのは著作権法上二次的著作物として扱われます。
例えば原作の小説やマンガを映画とする場合には、その映画の元となる作品が一次的著作物で、映画は二次的著作物というのは分かりやすいと思います。
しかし最初から映画として製作する為に原作や脚本を書き下ろした場合に関しても映画が二次的著作物になります。
小説や漫画などの一次的著作物に当たるのが脚本というわけです。
映画を制作する際に重要なのが脚本であり、脚本によって
ストーリーなどの大枠が決まり、脚本に書かれた内容を映像化するのが映画だからです。
映画内で使用される音楽を作っている作家は著作権法上モダンオーサーではないとされています。
ということは映画の音楽を作っている作家は映画自体の著作者ではなく、映画のために利用されている著作物の著作者ということになります。
その映画のために映画音楽をかき下ろしたとしてもこれは変わらず、映画に使用されているだけの独立した著作物として、映画とは違う権利を持つことになります。
例えば著作隣接権の一つに上演権というものがありますが、映画を上映する場合にその映画の上演権とは別に映画音楽に対しての条件が働きます。
これは映画とは別に独立した著作物であるからです。
映画に使われるためにその音楽を作ったとしても、その映画がテレビで放送されたりインターネット配信などをされた場合は、その映画音楽の公衆送信権(テレビやインターネットなどの公の場に送信する権利)などが働くようになります。
映画のオリジナルサウンドトラックを発売する場合には複製権譲渡権(コピーしてCDなどにプレスするときなどに行使)などが働きますし、DVD にする場合には複製権などが働きます。
つまり制作された映画を利用することに関してその映画製作者だけではなく映画音楽の作曲者(または著作権者)にも許可を得なければいけないということになります。
映画オリジナルの音楽の著作権の管理
その映画のためだけに作られたオリジナルの映画音楽などは、映画会社系列の音楽出版社が著作権を管理していることが多いようです。
また最近の映画は製作委員会方式によって制作されることが多いので 、製作委員会が共同出版社として著作権者に取ることもあるようです。
こういった場合はオリジナルサウンドトラックなどの製作者は映画製作所になるので、それらを発売するレコード会社は映画製作者と使用許諾契約を交わす必要があります。
また映画音楽に参加したアーティストの権利である「実演家としての権利」は映画に入ってしまうと働くなると言うデメリットがあります。
つまりその映画のために音楽を作ったり演奏したりといったことをしたとしても、
アーティストは映画の上映、放送、ビデオ化などに対しての権利を持つことはできないということです。
ただサウンドトラックなどを作る場合は著作隣接権が復活するので映画製作者はアーティストなどと権利について手続きをしなければならないということになります。
まとめ
今回は映画音楽の著作権について、映画の著作権がどのような形になっているかの概要と一緒に解説しました。
次回は既成の曲を映画の音楽に使う場合について著作権がどのように働くのかについて解説したいと思います。